41 冒険心は歳と逆向きに進む
by 聖 ★章弘(akimitsu)
田島は源の横に並び、
「あれは何か怪しいものではなく・・珍しい動物では・・・」
疑問を投げてみるが、源は空気の抜けたような声で、
「儂は見てないがぁ、そんなこと・・解る訳ないがぁ」
田島は源の言葉に頷き
「・・・たしかに・・そうだが・・。先に進むしかないか・・。」
静かについてゆくことにした。
「おーこんな所に道があるがぁ」
先をゆく武と杉が、小さいながらも道を見つける。
先ほどの動物の気配も足跡も見つけることは出来なかったが、意見のほうは、
「この道を行こう」と意見がまとまる。
「滝の音がするがぁ、どうするがぁ」
杉が侍達に尋ねる。
皆は一度立ち止まり、どうしたものか意見を交わして、
「とりあえずは、どこかで休むとしよう」
意見の一致で、いま少し歩いて休み場所を探す事になる。
道は整備されているのか歩きやすい。
「おおっ。小屋があるがぁ」
武が気がつき指を指し示す。
小屋に近づき中を覗くと
「手入れされて片付いているがぁ・・・ここでしばらく休ませてもらうがぁ」
手ごろな小屋を見つけて一休み
「しばらく休んで村でもさがすがぁ。暗くなる前に腹ごしらえでもするがぁ」
若者は胃袋の心配も始める。
宮田も田島もへとへとだった。
何日もかけて見失ったでは面子もたたず、だからといってきた道を歩いて帰る気にもなれなかった。
宮田と田島は話し合い、海まで行くことに決めていた。
「お前達」
山男三人にあらたまり声を掛ける。
「すまぬが海までどれくらいの道のり・・・田島殿と私は海まで逃げていると思う・・私達も海までゆこうと思うが・・幾日かかろうか・・・」
山男三人はしばらく話し合い。
儂も若いのも海までは行った事がないがぁ・・・話によると儂らの村から歩き通しで五日以上かかると聞いた事があるがぁ・・どんなに急いでも・・・・。」
源の言葉が終わると、
「すまぬが・・・。」
田島は三人に向かい、
「海まで一緒に来てもらうとありがたい。お前達三人はさすが山男、今までの歩みに疲れの色も少なく、源どのなどは細身の体に太い肝をお持ちの様子。大変頼もしい。・・・・もちろんいくばくかの礼はするつもりだ」
田島の言葉に、
「おおっオイラはついてゆくが・・・杉はどうするがぁ」
武は新しい世界を知る事の刺激に歯止めが利かなくなっていた。海までといわず、そのまま、何処までも歩いて行って見たい気持ちでいっぱいだった。
「おおっ、もちろんオラもゆくがぁっ。オイラは海の向こうの果てまで行ってもよいがぁ」
若者二人は勢いよく立ち上がり、今にも『いくがぁ』と、歩き出しそうにはしゃいでいる。
若者二人の姿に、宮田と田島は
「うむうむ」と頷き、
「して・・・源どのは・・。」
一番の頼りと源に視線を投げる。
「ああ、儂もあと幾日か暇だがぁ」
言葉少なげに応え、
「礼が貰えるならゆくがぁ」
しっかりもしていた。
「もちろんだ」
宮田と田島は応え、
「出来ることならば、暗くなる前に馬を調達したいが・・。」
と、望みを口に出し、源の答えをまつ。
「儂らもこの辺りにはくわしくないがぁ・・この小屋からすると、そう遠くない処に村がありそうだがぁ」
その小屋にいたのは、短い間だった。
出来るなら、今日のうちに村を探し出し、寝床と食事と馬を調達したかった。
「じゃ、いくがぁ」
源の言葉に宮田と田島が、重たい足を引きつり、小屋の戸に手を掛ける。田島が戸をガタガタと音をたてたその時、小屋の周りでガサガサと草を掻き分け、ダダと走り抜ける音がする。
侍達は無意識に手を刀に伸ばす。
若者達はビクリと驚く、ただ一人、源は落ち着き、
「鹿だ・・」とつぶやく。
田島が腰を落とし小屋から走り出る。それに続いて宮田が走り出て辺りを見回す。
「だれだっ」叫ぶ。
「あっ、宮田殿あそこに」
なにかが草を掻き分け走り去ってゆく。
「あちらにも」
今度は宮田が何かに気付き揺れ動く草木を指差す。
「・・・・しか・・・。」
宮田と田島がふと呟く、その後に杉の声。
「やややっ、あれは鹿じゃないのがぁっ、牛の角だったがぁ・・・。」
小屋から出て侍二人の横をテクテクと通り過ぎる。
武と源もでてきて、
「さっきのが、いたのがぁ」
歩み寄ってくる。
遠くから滝の音が聞こえてくる。藪を踏みしめ進む杉の背中をみていると、その背中が驚いたように立ち止まる。
「どうした」
皆が不審と杉に近づく、杉は静かな声で、
「あそこ見るがぁ」
滝の音が杉の言葉をかき消そうとする。
「おおっこれは・・・」
言葉は要らなかった。目で見れば杉の驚きは理解できた。
急に視野が開け、その辺りだけ崖になっていた。
崖を見下ろすと下のほうには沢がある。
目には見えないが、滝の音がゴオゴオと響いて、何処からか空気に漂う水しぶきらしきを運んでくる。
水しぶきで霞がかかった沢を皆で見下ろすと、
「ああっ・・」
源が言葉をこぼす。
「やはりカモシカだがぁ」
源が見下ろしながら、
「珍しいがぁ・・」
いかにも珍しそうにしゃべる。
「この辺りにはいるがぁー。儂らの山にはあまりいないがぁ」
「あれがカモシカがぁ・・」
若者二人が嬉しそうに見つめている。
「オラは初めてだがぁ」
楽しげに目を凝らしている。
「もっと近くで見たがったがぁ・・・」
杉が少し喜び、武が少し残念がる。
「なんだそれは」
何の話だと田島が聴いてくる。
源がゆっくり静かに
「山奥の鹿だがぁ・・牛に似ていて毛が牛より多いがぁ」
少し珍しいと話して聞かせる。

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by 聖 ★章弘(akimitsu)
田島は源の横に並び、
「あれは何か怪しいものではなく・・珍しい動物では・・・」
疑問を投げてみるが、源は空気の抜けたような声で、
「儂は見てないがぁ、そんなこと・・解る訳ないがぁ」
田島は源の言葉に頷き
「・・・たしかに・・そうだが・・。先に進むしかないか・・。」
静かについてゆくことにした。
「おーこんな所に道があるがぁ」
先をゆく武と杉が、小さいながらも道を見つける。
先ほどの動物の気配も足跡も見つけることは出来なかったが、意見のほうは、
「この道を行こう」と意見がまとまる。
「滝の音がするがぁ、どうするがぁ」
杉が侍達に尋ねる。
皆は一度立ち止まり、どうしたものか意見を交わして、
「とりあえずは、どこかで休むとしよう」
意見の一致で、いま少し歩いて休み場所を探す事になる。
道は整備されているのか歩きやすい。
「おおっ。小屋があるがぁ」
武が気がつき指を指し示す。
小屋に近づき中を覗くと
「手入れされて片付いているがぁ・・・ここでしばらく休ませてもらうがぁ」
手ごろな小屋を見つけて一休み
「しばらく休んで村でもさがすがぁ。暗くなる前に腹ごしらえでもするがぁ」
若者は胃袋の心配も始める。
宮田も田島もへとへとだった。
何日もかけて見失ったでは面子もたたず、だからといってきた道を歩いて帰る気にもなれなかった。
宮田と田島は話し合い、海まで行くことに決めていた。
「お前達」
山男三人にあらたまり声を掛ける。
「すまぬが海までどれくらいの道のり・・・田島殿と私は海まで逃げていると思う・・私達も海までゆこうと思うが・・幾日かかろうか・・・」
山男三人はしばらく話し合い。
儂も若いのも海までは行った事がないがぁ・・・話によると儂らの村から歩き通しで五日以上かかると聞いた事があるがぁ・・どんなに急いでも・・・・。」
源の言葉が終わると、
「すまぬが・・・。」
田島は三人に向かい、
「海まで一緒に来てもらうとありがたい。お前達三人はさすが山男、今までの歩みに疲れの色も少なく、源どのなどは細身の体に太い肝をお持ちの様子。大変頼もしい。・・・・もちろんいくばくかの礼はするつもりだ」
田島の言葉に、
「おおっオイラはついてゆくが・・・杉はどうするがぁ」
武は新しい世界を知る事の刺激に歯止めが利かなくなっていた。海までといわず、そのまま、何処までも歩いて行って見たい気持ちでいっぱいだった。
「おおっ、もちろんオラもゆくがぁっ。オイラは海の向こうの果てまで行ってもよいがぁ」
若者二人は勢いよく立ち上がり、今にも『いくがぁ』と、歩き出しそうにはしゃいでいる。
若者二人の姿に、宮田と田島は
「うむうむ」と頷き、
「して・・・源どのは・・。」
一番の頼りと源に視線を投げる。
「ああ、儂もあと幾日か暇だがぁ」
言葉少なげに応え、
「礼が貰えるならゆくがぁ」
しっかりもしていた。
「もちろんだ」
宮田と田島は応え、
「出来ることならば、暗くなる前に馬を調達したいが・・。」
と、望みを口に出し、源の答えをまつ。
「儂らもこの辺りにはくわしくないがぁ・・この小屋からすると、そう遠くない処に村がありそうだがぁ」
その小屋にいたのは、短い間だった。
出来るなら、今日のうちに村を探し出し、寝床と食事と馬を調達したかった。
「じゃ、いくがぁ」
源の言葉に宮田と田島が、重たい足を引きつり、小屋の戸に手を掛ける。田島が戸をガタガタと音をたてたその時、小屋の周りでガサガサと草を掻き分け、ダダと走り抜ける音がする。
侍達は無意識に手を刀に伸ばす。
若者達はビクリと驚く、ただ一人、源は落ち着き、
「鹿だ・・」とつぶやく。
田島が腰を落とし小屋から走り出る。それに続いて宮田が走り出て辺りを見回す。
「だれだっ」叫ぶ。
「あっ、宮田殿あそこに」
なにかが草を掻き分け走り去ってゆく。
「あちらにも」
今度は宮田が何かに気付き揺れ動く草木を指差す。
「・・・・しか・・・。」
宮田と田島がふと呟く、その後に杉の声。
「やややっ、あれは鹿じゃないのがぁっ、牛の角だったがぁ・・・。」
小屋から出て侍二人の横をテクテクと通り過ぎる。
武と源もでてきて、
「さっきのが、いたのがぁ」
歩み寄ってくる。
遠くから滝の音が聞こえてくる。藪を踏みしめ進む杉の背中をみていると、その背中が驚いたように立ち止まる。
「どうした」
皆が不審と杉に近づく、杉は静かな声で、
「あそこ見るがぁ」
滝の音が杉の言葉をかき消そうとする。
「おおっこれは・・・」
言葉は要らなかった。目で見れば杉の驚きは理解できた。
急に視野が開け、その辺りだけ崖になっていた。
崖を見下ろすと下のほうには沢がある。
目には見えないが、滝の音がゴオゴオと響いて、何処からか空気に漂う水しぶきらしきを運んでくる。
水しぶきで霞がかかった沢を皆で見下ろすと、
「ああっ・・」
源が言葉をこぼす。
「やはりカモシカだがぁ」
源が見下ろしながら、
「珍しいがぁ・・」
いかにも珍しそうにしゃべる。
「この辺りにはいるがぁー。儂らの山にはあまりいないがぁ」
「あれがカモシカがぁ・・」
若者二人が嬉しそうに見つめている。
「オラは初めてだがぁ」
楽しげに目を凝らしている。
「もっと近くで見たがったがぁ・・・」
杉が少し喜び、武が少し残念がる。
「なんだそれは」
何の話だと田島が聴いてくる。
源がゆっくり静かに
「山奥の鹿だがぁ・・牛に似ていて毛が牛より多いがぁ」
少し珍しいと話して聞かせる。
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