59 住んでるだけなら同じさ ゆるりと歩く3人。
唐一朗は振り返り、山男達が浜辺を歩き去るのを確かめてから
「どうしたボウ」
ボウの緊張した動きを確かめる。
ボウは唐一朗の顔から、翁へと視線を移す。
視線を移された翁は、
「邪魔ならば、私は離れておくが・・。」
翁が気を使う。
「構いませぬ」
唐一朗が翁に答え、ボウへと『大丈夫だ』とうなづいてみせる。
ボウもうなづいて見せ、唐一朗の疑問より、自分の疑問を先に言葉にしていた。
「オイラ、はやく旅僧さんたちに逢いたいな。みんなの怪我はどういったぐあいだい」
「うむ、皆熱でうなされていたが今はよい」
唐一朗は前を見たままこたえる。
「おいらはどれ程寝てたのさ。山の中にいたはずなのに、いつのまにか立派なお屋敷に居ただろう。あれは唐一朗さんの家かい」
身体に痛みの残るボウだが、それを忘れさせてしまう好奇心は顕在だった。これだけしゃべることが出来るのなら身体は回復しているのだろう。
「家ではない」
唐一朗は前を見たまま歩く。その左隣には翁、翁も髭を摩りながら笑っている。唐一朗の右隣では脚をかばいながら忙しく二人の顔を見回し、
「家ではないのかい。じゃ、翁さんの家かい、豪華な家だなぁー」
「ほっほっほっ」
翁は笑い声をあげながら、
「それほどの金持ちならよいのだがな」
髭を摩りながら愉快そうだ。
唐一朗は軽く笑みを見せながらまっすぐ歩く。
「あれは使用人たちの仕事場だ。帳簿をつける者、船に乗るもの、隣町に行くもの、あの場所で飯を食ったり仕事の手配をしたり・・・色々だ」
唐一朗の言葉に、
「家は今からゆくところかい」
とてつもなく大きな屋敷を想像して行き先を問うボウ。
「いや」
唐一朗は否定の言葉ののち一点を指差し、
「あれが家だ。まあ・・・。住んでいるだけで・・・親の家であり兄の家だ」
「ふーん。唐一朗さんはオイラと同じだね」
唐一朗は『何故』と顔に出しボウへと顔をむける。
「ボウと同じか・・なぜだ」
「同じさ、住んでいるだけだろう。オイラもなかなかの大きな寺に住んでたんだ」
ボウの言葉に唐一朗は楽しげな笑みを浮かべ。
「おおおっ。そうだな、儂とボウは同じだ。なるほど、人は食べる量も必要な広さもあまり違いはないな。今居る場所が各々違うだけだ」
唐一朗は何かに気付いたように、楽しげに一人うなづき
「そうだ、居場所を・・・自分の居る場所が問題なのだ」
次男坊として身の置き場に困っていたのか、何かに気付いた様子だ。
ひとり気付きがあった唐一朗の家を見ながら、
「塀と、それより高く育った木々しか見えない家だね」
松の木々の向こうの小高い場所に、白い塀が延々と続いている。
塀を見つめ歩くボウに唐一朗が
「家の話は終わりだ。あれを見よ」
前方を指差す唐一朗。
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